紙つなげ!

 
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 【紙つなげ !】 佐々涼子

 日本製紙石巻工場に働く人々を
 通して見た 2011311

 テレビでは知り得なかった
 東日本大震災のノンフィクション


  震災後に仙台を訪れた時
 地元の人が言った


 「流された車には人が乗っていた
  テレビでは人が消されているんだ


 「そうだったのか」と
  初めて気付かされた


  石巻工場の人々が聞いたクラクションの音
  津波に飲みこまれながら 
  あちこちで鳴るクラクションの音が少しずつ小さくなり 
  最後のひとつが消えて 静寂


   水が車内に満ち 意識を失う刹那 何を思ったのだろう・・・
  為す術もなくその音を聞く人々の 悲しみ


   死んで行くことの無念 
  忘れることのできない体験を身に負いながら生きる重さ
  どちらも並大抵のことではない
   (生涯忘れることはないであろう音)


  災害の時の自制心に満ちた日本人の振る舞いは美談だ
  でも違う
  場違いな金属バットやゴルフクラブを持ち、略奪するひと
  地元の人々の現実の声はテレビからは聞こえてこなかった


   日本製紙は日本の出版用紙の約4割を担っている
  その会社の主力工場が石巻工場なのだ


  電子書籍の台頭で紙離れが続いている
   私は断然 紙派
   本を開いたときのインクの匂い
   言葉を思い出すときに
   「あの文章・・何ページ頃の真ん中あたりにあったような・・」
   そんな記憶も 紙だからできる


   紙を作る人たちの 紙への愛が凄い
   文庫本の紙質も「拘り」で出版社によって異なることも初めて知った


   漫画本だって、とても紙に拘っている
   安価だから更紙で良いのかと思っていたら そうではない
   上質紙で仕上がった「薄い」漫画本は 子供が手にして嬉しくない
   厚みがあって しかも軽くないといけない・・・などなど


   紙は化学だ
   紙にわくわくしてしまう一冊
   紙を見るに 前のめりになりそうだ

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