父の逸脱

                
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  父の逸脱  ピアノレッスンという拷問
           セリーヌ・ラファエル著

  これは児童虐待の本である




  お化け屋敷を入口から出たことがありますか?
  
  子どものころ
  夏祭りになると 見世物小屋の興業がやってきた
  サーカス小屋や猛獣小屋 爆音を響かせて回るオートバイの曲乗り

  そして お化け屋敷
  カーテン一枚を通り抜けた入口で 恐怖のあまり一歩も進めない
  泣いて泣き叫んで・・・
  小屋のおじさんは呆れてあきらめて 入口から出してくれた
       (以来 肝試しなどと大それたことはやらない)

  私は怖いことと痛いことが大人になっても苦手だ
  だれかが叩かれているのを見るのは 我がことのように嫌だ
       (ボクシングもプロレスも痛そうなスポーツは見ない)

  そんな私なのに 本書を寝床の中で一気に読み終えた

  二歳半で始まったピアノレッスン
  類まれな才能を持った娘を 一流のピアニストに育て上げると決めた父
  レッスンの過酷さと共に振り下ろされる容赦のない体罰

  髪を鷲掴みにされて階段を引き摺りおろされる
  その背中の痛みを 夢の中で我がことのように感じた
  恐怖のあまり 自分の叫ぶ声に目が覚めた

  原書のタイトルは【常軌を逸した出来事ー父の暴力に耐え】ということだが
  日本語訳の【逸脱】は妙訳と思う

  なぜなら 父に悪気はないのだ
  ただ教育のため 本人のためなのだ
  ちょっと度が過ぎただけ
  この確信は怖い

  著者は虐待の被害を訴え保護される
  現在は望んでいた医師として働いている

    『父は自分を愛していたかもしれないが、その愛し方は間違っていた。』
    『過去を冷静に振り返り、それを受け入れることはしばしば困難が伴う。
     けれども、それは未来へ歩むために必要な作業なのだ。』

  聡明で強く しなやかな女性だ

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