非色/有吉佐和子


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  【複合汚染】を再読し その時に知った本
  一冊の本が 次の本を教えてくれる

  ひとは何によって 優位性を保つのだろうか
 
  第二次世界大戦後の日本にやってきた進駐軍
  黒人の米兵と結婚し 戦争花嫁としてアメリカに渡り そこに暮らす
 
  彼女が目の当たりにする差別
  日本人による日本人差別
  アメリカ人によるアメリカ人差別
  黒人によるプエルトリコ人差別
  
  さらにさらにと・・・
     【金持ちは貧乏人を――、頭のいいものは悪い人間を――、逼迫して暮らす人は
      昔の系図を展げ――成り上がりを罵倒する。美人は不器量を――、インテリは
      学歴のないものを軽蔑する。
      人間は誰でも自分よりなんらかの形で以下のものを設定し、それによって自分を
      より優れていると思いたいのではないか。それでなければ落ち着かない。それで
      なければ生きて行けないのではないか】(抜粋)



  苦しさの中にいるひとに
  「あなたより大変な人はいっぱいいる。だから大丈夫。頑張って」と
  慰めの言葉をきくことがある

  私がとても嫌な気持ちになる 助言だ

  苦しみや悲しみは当事者にはいつだって120%なのだ
  誰かと比べることで癒されるわけでも 問題が解決するわけでもない
  
  私はひとに対してこの言葉を言わないし
  自分にも言わない 惨めさと情けなさが いっそう募るから
  比較から生まれた優位は
  苛立ちに繋がり 際限を知らない

  色に非ず
     【肌の色が問題なのではない
      色が差別を生むのではない
      ひとはいつも他者より優越感を感じていたいのだ】(抜粋)

  決して絶えることのない悲惨な環境の中で
  主人公は自身の立つ場所で
  【私らしく生きる】と決めた


  納得したのではない

  自分の気持ちと対峙し ありのままを見つめることで
  日常を生きる力を得たのかもしれない



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