アウシュヴィッツの図書係
文学は、真夜中、荒野の真っただ中で擦るマッチと同じだ。
マッチ一本ではとうてい明るくならないが、
一本のマッチは、周りにどれだけの闇があるのかを私たちに気づかせてくれる。
自由を奪い、思想をコントロールしようとするとき
独裁者がしてきたことは 書物を焼却することだ
国を問わずそうであったことを 歴史に確認できる
アウシュヴィッツで本を所有することは
そのまま処刑に繋がるということだ
そのような中で 14歳の少女が図書係に任命された
【彼女はここには紙の本が八冊と「生きた本」 が六冊あります】
と子供たちに伝えた
生きた本は語り部だ
【この何年かで恐怖には際限がないことを思い知った】
という中で秘密を守り続け、本を愛おしみながら勤めを全うし生還する
97年の冬にアウシュヴィッツを訪れた
引き込み線の先にはもう線路がない 終着点なのだ
ここで行われた過去を知る者が その線路を見る時
戦場とも違う
逃げることも隠れることも出来ない 圧倒的な恐怖
そのことに呼吸が苦しくなる
ベッドが並ぶこの建物では 入り口で立ちすくんだ
一歩も進めない
横たわる人々がいっせいに私を見た
こんなに静かな博物館を他には知らない
見学者はいるのです
でも誰もが息をすることを忘れてしまうのでしょう
時折
「ふぅー」 という息を吐く音が聞こえてくるだけです
アンネ・フランク ハウス(オランダ)
アンネは帰ってくることができなかった
アンネの隠れ家を訪れた時
「物語」 のひとつひとつが事実として
そこにあった
ひとはパンのみにて生くるに非ず
そのパンさえないところで 尊厳を失わなかった人々がいたのだ
わたくしは群れることが苦手です
集団の中で 自分の立ち位置のために 自分の心と闘うからです
正直だろうか・・・ 誠実だろうか・・・
ひとは自身を過信しない方がよいと いつも思っています
自分の心持ちに自信がなく臆病者の私は いつもそう思っています
学生運動の盛んな時に 学生時代を過ごしました
集団が一斉に同じ方向を向くことに 私の気持ちが納得しないのです
人間は残酷なものだとも思います
遠藤周作は この地に立った時
魂の叫ぶ声を聴いたと 本に書いていました
この悲しみの地もあるのです