異邦人(いりびと)/原田マハ
「美」は魔物
「アートのためならすべてを捨てて突き詰めていくという
―― 芸術至上主義の人を書きたくて登場させたのが菜穂 ――
彼女は私の理想像 ―― 美のためなら夫をも蹴散らしていく、
圧倒的に強い女性を描きたかった」
と、女性誌に語った著者
アートキュレーターでもある氏が描く本書は
浅学の身には、分からないことだらけ
数ページ読んでは付箋
また付箋 また・・・
和服や壁の色を表現するだけで
焦香、枡花色、藍鉄色、薄梅鼠、山鳩色、鳩羽鼠、浅葱色・・・
ことばが美しい
ネット検索をしながら読み進む
もちろん わくわくしながら
寝室の壁に相対する写真
杉本博司・・海景
アンセル・アダムス・・ムーンライズ
どんな写真?と検索する
そしてパウル・クレーも・・・
お借りしてきました
架空と実在が同時に書かれる小説は
「無知である自分」をつくづく思い知らされる
物語は有吉美術館運営に関わる有吉菜穂と
画廊を経営する篁一輝が結婚
共に資金難から発生する人間関係に重きを置いて展開する
ストーリーそのものには少々興味薄
最後の部分はドラマチックに締めましたねという感じ
それよりも
芸術家としての画家
利益が絡む画廊
この関係は色々な意味で興味深い
画廊が画家を見出し そして売り出す
この構図に修羅も感じる
ひとの欲が絡むと
「美」は魔物
深淵であやうい