異邦人(いりびと)/原田マハ


   「美」は魔物

イメージ 1

「アートのためならすべてを捨てて突き詰めていくという
―― 芸術至上主義の人を書きたくて登場させたのが菜穂 ――
彼女は私の理想像 ―― 美のためなら夫をも蹴散らしていく、
圧倒的に強い女性を描きたかった」
と、女性誌に語った著者

アートキュレーターでもある氏が描く本書は
浅学の身には、分からないことだらけ
数ページ読んでは付箋
また付箋  また・・・

和服や壁の色を表現するだけで
焦香、枡花色、藍鉄色、薄梅鼠、山鳩色、鳩羽鼠、浅葱色・・・
ことばが美しい

ネット検索をしながら読み進む
もちろん わくわくしながら


寝室の壁に相対する写真
杉本博司・・海景
アンセル・アダムス・・ムーンライズ

どんな写真?と検索する

そしてパウル・クレーも・・・

イメージ 2
           お借りしてきました

架空と実在が同時に書かれる小説は
「無知である自分」をつくづく思い知らされる

物語は有吉美術館運営に関わる有吉菜穂と
画廊を経営する篁一輝が結婚
共に資金難から発生する人間関係に重きを置いて展開する

ストーリーそのものには少々興味薄
最後の部分はドラマチックに締めましたねという感じ

それよりも
芸術家としての画家
利益が絡む画廊
この関係は色々な意味で興味深い

画廊が画家を見出し そして売り出す
この構図に修羅も感じる

ひとの欲が絡むと
「美」は魔物
深淵であやうい